2026年2月に開幕するミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、選手たちが滞在する「選手村」に注目が集まっています。
この大会はミラノとコルティナ・ダンペッツォの2都市が共同開催する史上初の冬季五輪であり、競技会場が北イタリア各地に点在する「分散型オリンピック」です。
そのため選手村も一ヶ所に集中せず複数に分散して設けられるユニークな方式が採用されています。
本記事ではミラノ・コルティナ大会の選手村の場所や特徴、計画変更の理由と安全性への懸念、設備の内容、さらに実際に滞在する選手たちのコメントなど最新情報をまとめてご紹介します。
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ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの選手村の場所はどこ?
今回の冬季五輪では選手村が北イタリア各地に合計6か所設置されます。
主な拠点は大都市ミラノと山岳リゾートのコルティナ・ダンペッツォですが、その他にも競技クラスターごとに用意されています。
具体的には、ミラノ市内の「ミラノ選手村」、コルティナ・ダンペッツォ近郊の「コルティナ選手村」に加え、アルペンスキー男子などが行われるボルミオ周辺(ロンバルディア州)や、フリースタイルスキー/スノーボードの競技地リヴィーニョ、ノルディックスキーの会場となるプレダッツォ(トレント自治県)、そしてバイアスロン会場のアンテルセルヴァ(南チロル自治県)にも、それぞれ選手村または代替施設が設けられています。
中心となるミラノ選手村は、ミラノ市南部のポルタ・ロマーナ旧国鉄操車場跡地に新設された大規模複合施設です。
6棟の新築建物と歴史的建造物の改修からなる近代的な住宅街で、約60,000平方メートルの敷地に1,500人ほどの選手団を受け入れます。
大会期間中は24時間利用可能な巨大ダイニングホールや最新設備のトレーニングジム、メンタルケアのための静かなスペース「マインドゾーン」などが完備され、安全かつ快適に過ごせるよう工夫されています。
ミラノの村は市街地にあり、周辺にはプラダ財団の美術館やファッション企業のオフィスが立地するエリアで、五輪後は学生寮や手頃な賃貸住宅へと改装される計画です。
大会後には1,700人分の学生向けベッドが提供され、1階部分にはカフェやショップ、緑地広場などが整備される予定で、ミラノ市に持続的なレガシーを残す取り組みとなっています。
一方、冬季競技の中心地であるコルティナ選手村は、街の中心部から車で10分ほど離れたフィアンメス(Fiames)地区の谷間に位置し、約1,400人の選手・関係者が滞在可能です。
こちらは恒久建築ではなく、377棟の仮設の木製モバイルホーム(トレーラーハウス)が並ぶ“スノーバレーの村”となっています。
背景には環境への配慮があり、大会後に自然を元の状態へ戻すことを重視した結果、仮設住宅を活用する計画が採用されました。
コルティナでは1956年以来70年ぶりの五輪開催という歴史的節目でもあり、山岳地帯の美しい風景に溶け込むような形で村が設営されています。周囲をドロミテの山々に囲まれたロケーションで、晴れた日には宿舎を出てすぐ目前にスキー競技のコースが望める絶好のロケーションとのことです。
なお、上記以外の選手村代替施設としてアンテルセルヴァ(Antholz)では既存のホテル4軒を改装して約300床を確保、ボルミオでもホテル4軒で約400床、リヴィーニョではアルプスの山小屋風ロッジ3棟に計800床が用意され、大会後はいずれも観光宿泊施設として通常営業に戻ります。
プレダッツォでは地元の財務警察学校の宿舎を改修し、選手・役員約750人(パラ時900人超)を収容する計画です。
このように既存インフラの活用と新設施設の組み合わせで、地域全体で選手を受け入れるしくみが取られているのがミラノ・コルティナ大会の特徴です。
変更された理由!安全なの?
ミラノ・コルティナ大会の選手村計画は、大会招致段階からいくつか変更が生じています。
当初は「大会後も恒久的に活用する施設」を各地に整備する方針でしたが、現在では環境保護や費用面の理由から仮設施設中心に切り替える方針へ変更されました。
特にコルティナの村については、当初より「大会終了後すぐ解体し自然環境を元通りにする」と説明されていたものの、その後2028年冬季ユースオリンピックでの再利用も見据えて一定期間(最大2年間)の存続が許可される方向となっています。
もっとも設置場所のフィアンメス地区はボイーテ川沿いで洪水など地盤リスクが指摘されるエリアでもあり、本来は長期設置に適さないため、環境団体などから懸念の声も上がりました。
組織委員会は「仮設村は高規格のデザインで環境負荷を抑えた持続可能なプロジェクト」と強調しており、実際モバイルホームは大会後にイタリア各地のキャンプ場などで再活用する計画になっています。
解体・移設前提のため、地面に恒久的なコンクリート基礎を打たず短工期で設営できるメリットもありました。
結果として「作らない五輪」の理念に沿い、大自然の中にも必要最低限のインフラで選手受け入れを実現しているわけです。
では、仮設の選手村で安全・快適に過ごせるのか?
大会前は一部で「プレハブの簡素な住まいで寒さは大丈夫か」と不安視する声もありました。
しかし蓋を開けてみると、各居室には壁掛けヒーターと天井埋込型の遠赤外線パネルヒーターが備え付けられ、室温25℃程度まで十分暖房可能とのことで、実際に入村した選手からは「暖かく、水回りも問題なく機能している」と概ね好評です。
オーストラリアのスケルトン選手ニック・ティミンズは「当初はトレーラーハウス暮らしに不安もあったが、来てみたらとても快適だ」と述べ、設備の十分さに安心した様子でした。
また各室ごとに温度調節が可能なため、一人ひとり好みの暖かさに設定できる柔軟性もあります。こうした工夫により、標高約1,300mの谷間でも防寒・給湯面で大きな問題は起きていないようです。
一方で、宿泊環境の質を重視して村への滞在を選ばない動きもありました。
冬季競技の強国ノルウェーは、自国選手(特にアルペンスキー陣)について公式選手村ではなく山麓のホテルに宿泊させる方針を打ち出しました。仮設住宅という「質素な宿」に懸念を示したとも報じられていますが、大会組織委は
「村には最新のジムや交流設備が整っており、大半の国は利用する予定。
村の共用施設は滞在者以外の選手も練習や交流のため訪れるだろう」と説明しています。
実際、開催国イタリアや日本を含む多くの国は通常通り選手村に入っており、現地での練習拠点や他国選手との交流のメリットを重視しているようです。
さらにセキュリティ面では、イタリア国家憲兵(カラビニエリ)と大会財団が連携して警備にあたる協定も結ばれ、不審者の立入やテロリスクへの厳重な対策が取られています。
そうした総合的な安全管理のもと、選手たちは安心して競技に集中できる環境が整えられていると言えるでしょう。
選手村にどんな施設が整っているの?
各選手村には、選手生活を支える様々な施設・サービスが用意されています。
食事は大会運営の要でもあり、ミラノのメインダイニングセンターでは地元イタリアのケータリング業者が24時間体制で多彩なメニューを提供します。
広々とした食堂には一度に450人以上が着席可能で、例えばある日のランチにはチキン・ポーク・七面鳥などの肉料理、サーモン2種やヘイク(タラ科)などの魚料理、パスタ(トマトソースやラグーソース)、ピザやフォカッチャ、さらにビーガン・グルテンフリー対応のメニューも並びました。サラダバーには豆類やナッツも揃い、栄養バランスにも配慮されています。
デザートにはイタリア名物のカンノーリなどもあり、各国の選手たちから「さすが美食の国」と好評のようです。
居室(宿舎)は機能的かつシンプルな造りで、シングルベッド(一部ツイン利用)があり、下部が収納スペースになっています。
各室には専用のシャワー・トイレ・洗面が完備されており、イタリアならではの設備としてビデ(洗浄用の低い洗面器)が備わっている点が話題になりました。
クローゼットには物干しラックやハンガー、ランドリーバッグが用意され、掃除用のモップまで置かれています。
コンセントもベッド脇にUSBポート付きが用意されるなど電子機器への配慮も万全です。
内装は淡いグリーンのサイドテーブルや棚がアクセント程度のシンプルさですが、その分各国の選手団が旗や装飾を持ち込んで部屋ごと個性を演出しているようです。
実際、日本選手団は畳を持ち込んで部屋に敷いたり、フランスチームは有名家具店IKEAのマットレスパッドを搬入したりと、工夫して快適性を高めている様子も見られます。
共用エリアも充実しています。
最新マシンが揃うトレーニングジムは公式スポンサーのテクノジム社が設備提供し、ピラティスマシンまで完備された本格的な施設です。
またメンタルケアやリラックスのための「マインドゾーン」と呼ばれる静かな空間も設けられています。
ここでは瞑想やヨガができる他、専門のスタッフに気軽に悩み相談もできる仕組みで、心のケアに重点が置かれています。
スポンサー企業による娯楽スペースもあり、コカ・コーラ社は卓球台やエアホッケー台、写真ブースや大型テレビを備えた交流ラウンジを提供。
イタリア発のコスメブランド「KIKO」のブースでは10分間の無料メイクアップサービスが受けられ、チェコの女性選手が嬉しそうにメイクを楽しむ姿もあったとか。
さらに選手村恒例のピンバッジ交換もハイテク化されており、中国のアリババ社が提供するAIロボットアームが、自動販売機のような装置でランダムに交換ピンを選んでくれる体験スポットも登場しました。
入村する選手全員には最新型の折りたたみ式スマートフォン(提供:Samsung社。オリンピックリースをあしらった特別版)が無料配布されるなど、スポンサー各社が技術とサービスで選手村生活を盛り上げています。
もちろん医療施設やドーピング検査施設、郵便局や銀行ATM、宗教的配慮に応じた多宗教の祈祷室など、欠かせない設備もひと通り揃っています。
24時間対応のポリクリニック(医務室)には各国から派遣されたスポーツドクターや理学療法士も待機し、怪我の治療やコンディショニングケアに当たっています。
警備も厳重で、村の周囲はIDチェックと金属探知ゲートで管理され、不審物の持ち込みはシャットアウトされています。まさに「選手たちのもう一つの戦いの場」を陰で支える充実したインフラが整えられているのです。
参加選手たちのコメントは?
実際に選手村に滞在している選手たちからは、どのような声が聞こえてくるのでしょうか。
全体としては「快適で素晴らしい」「ここにいられることが夢みたい!」といったポジティブな感想が多いようです。
アメリカ女子カーリング代表のコリー・ティース選手はコルティナの村について「こんなにも多くの他国の選手たちと一緒に生活し、トレーニングし、食事できる環境は本当に楽しいです。朝目覚めて窓の外にそびえる山々を眺めると、まるで夢の中にいるみたいな気分」とその興奮を語っています。
各国の選手が集う村の雰囲気は独特で、「まさにオリンピックらしい特別な空間」だと言います。
日本の選手からも「食堂で他競技の海外スター選手と一緒になり刺激を受ける」「選手同士でピンバッジ交換をして交流できるのが嬉しい」といった声が聞かれ、競技以外でも貴重な経験を積んでいるようです。
コルティナで暮らす選手たちは当初不安もあった仮設住宅について、「思ったよりずっと居心地が良い」と好印象を抱いています。
先述のティミンズ選手(オーストラリア)は「トレーラーハウスと聞いて寒さや水回りを心配していたけど、実際は暖かく水圧もしっかりして快適です」と笑顔を見せました。
また「村の雰囲気が好きで、共用エリアに行けば他国の選手とすぐ仲良くなれる」と話すウクライナのリュージュ選手もおり、カナダ、ルーマニア、ラトビアなど様々な国の仲間とおしゃべりを楽しんでいるそうです。
村内の屋外カフェスタンドも人気スポットで、寒空の下でもカプチーノやエスプレッソを片手に情報交換する光景が見られます。
トリニダード・トバゴのボブスレー選手デアンドレ・ジョン選手は「子供の頃からの夢だった五輪の舞台にいられて感無量です。
しかもイタリア料理が食べ放題なんて最高ですね!」と冗談交じりに語り、お気に入りはラザニアだと教えてくれました。
スウェーデン女子カーリングコーチのアリソン・クレヴィアズック氏は「デザートのカンノーリが絶品でついつい食べ過ぎちゃう」と嬉しそうに話すなど、“美食の国”での食事を楽しみにする声も多く聞かれます。
SNS上でも各国の選手が選手村での様子を発信しており、オランダのスピードスケート選手ユッタ・リールダムさんは五輪リングのモニュメント前で踊るTikTok動画を投稿して話題になりました。
日本勢も村内で集合写真を撮ったり、日本食コーナーで同郷の仲間とホッと一息つく様子が報じられています。
こうしたエピソードから、選手村での時間が選手たちにとって競技の合間の貴重なリラックス&交流の場となっていることが伝わってきます。
まとめ
ミラノ・コルティナ冬季五輪の選手村は、ミラノ都市圏からアルプスの山中まで広範囲に分散しつつも、それぞれ工夫を凝らした快適な空間として機能しています。
場所ごとの特性に応じて新設・仮設・既存施設を組み合わせ、環境への配慮と大会後のレガシー活用を両立させようという意図が随所に感じられます。
仮設トレーラー村という大胆な挑戦も「高規格デザインの一時的コミュニティ」として概ね成功を収め、選手たちから大きな不満は聞こえてきません。
むしろ大自然の中で目覚める朝や、各国選手が垣根なく交流できる村の雰囲気は、オリンピックならではの醍醐味として多くの選手に受け入れられているようです。
大会関係者によれば「大会の精神はまず選手村に宿る」とも言われ、今回の村でもその言葉通り世界中のアスリートたちの友情と五輪スピリットが育まれています。
開会式直前のミラノ選手村には巨大な星条旗バナーや各国の旗が踊り、既に「小さな地球村」としての熱気に満ちていました。
選手村で結ばれた国際交流や思い出は、きっと大会後も選手たちの心に残る財産となることでしょう。
そんな舞台裏のドラマにも思いを馳せながら、競技本番をより一層楽しんでみてはいかがでしょうか。



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